白川郷 吊り橋付近にて

白川郷の駐車場からメインストリートに渡る、吊り橋付近にて。一面の銀世界が広がる中に、合掌造りの建物がいくつか見えます。白川郷は海外での人気がとても高いそうで、参加したツアーはバス2台による大所帯でしたが、うち3割は外国のお客さんでした。この時点では雪はさほど降っておらず、比較的楽に散策できると思っていましたが、いい意味で裏切られましたね。

昨年11月以来「オレため」の更新をすっかりサボッていたら、2018年になってしまいました。
皆さん、写真撮ってますか ? さて。元旦はどこか遠くで迎えたいと思っていたので、旅行会社のツアーに参加して白川郷に行ってきました。その少し前に、記録的な降雪のニュースを聞いていたので、「ひょっとしたら雪の風景を楽しめるのではないか」と思ったからです。そして、カメラもデジタルではなく、フィルムの一眼レフを使ってのんびり撮ろうと考えていました。

持って行ったのはペンタックスLX。1980年に発売された、当時のフラッグシップ機です。学生時代に使っていたこともあり、とても懐かしくなって後年に購入しました。露出モードは絞り優先AEとマニュアル。シャッター速度はX(1/75)を境にして低速が電子式、高速は機械式というハイブリッド方式が採用されたほか、当時世界初となる防塵・防滴構造を備えていました。ちなみに、1983年の「カメラ総合カタログ」によれば、当時の定価は125,000円。カメラ雑誌では、LXとキヤノンNewF-1、ニコンF3の3台を「憧れのBig3」として特集記事が組まれたこともありました。現在の中古相場は、良品レベルで37,800円。まだまだ根強い人気を誇るカメラです。レンズは50mm1本だけ。旅行ですし、肉眼に最も近いと言われるこの画角で、見たままの風景を形にしたいと思いました。それでも、予備電池とフィルムは用意していましたよ。

枝に付着した雪がとても幻想的
吊り橋の端付近では、枝に付着した雪がとても幻想的でした。このあたりでは、記念撮影をするかたが多くいらしたので、通行はスムーズにはいきません。それでも、皆さん撮影が終わるまで立ち止まって待つほどの余裕がありました。もうこの時点で、これまで何度か白川郷には来ていますが、おそらく最も条件が良いだろうという予測がつきました。大いにワクワクしたのです。

「今日は元旦」を思い出したシーン
サクサクと雪道を歩きながら、すっかり忘れていた「今日は元旦」を思い出したシーン。白い雪の風景に、赤い日の丸はとても良く映えます。はじめはヨコ位置でカメラを構えましたが、タテにして構図を確認したら、背景に雪に覆われた枝や葉を多く入れられることがわかり、こちらのほうを選んでいます。後ろに日の丸が入るよう、位置の調整をしてシャッターを押しました。

かん町地区の合掌造り集落
かん町地区の合掌造り集落。写真スポットとして有名なところです。ただ、距離が離れていることも理由か、今回の観光ツアーでは紹介されませんでした。とはいえ、白川郷で最も好きな場所なので、絶対に外せません。最初からここに行こうと決めていました。写真の欲を言えばキリがありませんが、大雪が「降っている」というタイミングでここに立てたこと。大興奮でした。

屋根に雪が積もって いるカット
かん町での撮影途中でフィルムが終わってしまいましたが、大雪の中ではさすがに交換ができませんでした。屋根のある場所に移動して予備フィルムを装填しましたが、「屋根に雪が積もっているカット」をどうしても撮りたかったので、再度戻って撮り直しました。大雪でファインダーの視界が阻まれていたので、ピントはカンと、コントラストの高低だけで合わせました。

白川郷に着いたら、元旦とは思えないほどたくさんの観光バスが停まっていました。多くは外国人観光客です。行程上の滞在時間は1時間しかありませんでしたが、駐車場から白川郷のメインストリートまでは往復で20分ほど。実質は40分で散策することになります。何度か来たことがあるので、行きたかったところに目標を定めて歩くことにしました。ゴム製の滑り止めを持って来たのが大正解。新雪を踏む音も心地よいです。
ところが、途中から雪が強くなって、歩くのにも苦労するほどに。傘は邪魔になるので使わなかったため、全身びしょ濡れでした。カメラはコートの下に入れました。写真を撮るときだけ取り出すことにしましたが、フードもフィルターも使わないので、雪がレンズの表面に付いてしまいます。でも、白川郷の素晴らしい雪景色と、カメラ、レンズを操作してこれを撮影する楽しさが相まって、他のことは何も考えずに没頭しました。今見ている風景を何とかして形に残したい、ただその一心だったのです。

周囲を雪に覆われるなか、ぽつんとたった1軒
そろそろ集合時間が迫ってきたので、急ぎ足で駐車場に向かっていた途中。ふと気付いて撮影したカットです。周囲を雪に覆われるなか、ぽつんとたった1軒立っていました。でも、よく見ていると、この家が前に進んでいるように感じられます。建物の配置を真ん中より少しずらしているのは、そうした意図があるからです。でもこの感覚、ちょっと解りにくいかもしれません。

無数の小さな枝に雪が乗って、実に幻想的
これも歩きながら気になって撮ってしまったカット。無数の小さな枝に雪が乗って、実に幻想的なシーンを作り出していました。でも、気になったのはそれが理由ではありません。この枝が触手に見えたからです。深海で生活する、「テヅルモヅル」というヒトデを連想してしまいました。撮っている最中もずっとそれを感じていて、「すごい、面白い ! 」と心の中で叫んでいました。

吊り橋の上から、帰り際に撮影
駐車場に向かう吊り橋の上から、帰り際に撮影。行きの風景とは全く異なる姿になりました。とにかくもう雪だらけ。目は大きく開けられません。でも、ファインダーを通せば、意外にも構図を確認する余裕がありました。右端に見える小さな橋がとても印象的ですが、撮影時にはここまで明確に意識はしていませんでした。それを思うと、とても不思議に感じられる写真なのです。

画面中央やや左寄りに見える橋をしっ かり意識して構図を作りました
今回の白川郷で最後に撮影したカット。こちらのほうは、画面中央やや左寄りに見える橋をしっかり意識して構図を作りました。雪がとにかくもの凄くて、でも素晴らしくて、とても楽しかった1時間でした。撮影した枚数はたったの35枚。でも、すごく凝縮した35カットでした。そして、最後までLXのシャッター音は乱れることもなく、しっかりと開閉してくれたのです。

飛騨高山の街並みを散策
白川郷のあとは、飛騨高山の街並みを散策しました。写真スポットとして案内された、中橋の上から撮影。逆光だったので、腕で影を作ってハレーションを抑えつつ、でもそれとわかってもらえるように、右下にキラキラ光る水面を入れています。この1カットしか撮っていなくて、失敗していたらそれはそれで仕方ないか、と思っていたのですが、LXはきっちり応えてくれました。

とても寒い中での撮影でしたが、LXは淡々と、こちらの要求に従って仕事をしてくれました。数日後。出来上がった写真には思っていた以上に満足できました。久し振りに、撮影した写真を部屋に飾ってみようかと思ったほどです。やっぱりフィルムって楽しい。そう感じました。

たくさん撮れないから、構図を考えてしっかり撮る、じっくり撮ろうとする。レンズのピントリングを回し、ここで大丈夫だろうかと念を押して位置を決める。すべて揃ったらシャッターをゆっくり押す。この一連の動作を楽しんだあとは、ワクワクしながら仕上がりを待つ。撮っている時に感じたことはずっと覚えているものです。そして、また使ってみたくなる。それがフィルム。

※掲載写真はフィルム現像+CD作成を依頼して、CDから無加工で取り込んでいます。
Photo & Text by 高山景司