F0.95 1/320 ISO200

少し前、カミュの『異邦人』を、それこそひさしぶりに読み返した。
最初に読んだのはいつの事だったのか、冷静に思い返してしまうと自分の年齢に改めて気付いてしまうほど昔のこと。
そもそも舞台となっているのは北アフリカのアルジェだ。記憶の中では完全にフランスあたりに舞台を移していたわけで、まずは自分の記憶がいかにいいかげんなのかを痛感した次第。ともかく歳を重ねた分、小説と対峙したときの印象も昔とは随分と変わっていた。

閑話休題。
ここで話をレンズに移そう。
明るいレンズというのは、写真に興味があれば気になる存在であることに間違いはないはず。
開放値0.95、これは人の目よりも明るいということになる。
レンズ名のノクトンとは、Nokt(夜)という単語。つまり夜でも撮影が可能なレンズということだ。しかも標準画角ではなく、相当な広角なのに明るいレンズというのは、かなり特殊なスペック。発売されたのは4年前だが、どうしてだか今試してみたくなった。

ところで、このスペックならば撮影は開放値の明るさと超広角を活かして夜の撮影に持ち出したくなるだろう。
あるいは日中に使うならNDフィルターを使うか、ある程度絞って使うかと考える。けれど今回は晴れた日中にフィルターレスで持ち出して、しかも開放0.95で撮影してみたいという衝動にかられた。
要はひねくれた性格なのだ。
早速、オリンパスOM-D E-M5 Mark IIに装着して撮影に出向いた。

F値を開放の0.95にセットする。
撮影モードは、どのような結果が得られるのか予測できなかったので、あえてカメラ任せで撮影をはじめる。日中の開放F0.95。シャッタースピードは常に最速、しかも露出オーバーの真っ白な結果になるのではと考えていた。
ところが結果はカメラの補正能力が高いのか、それとも開放0.95という数字に惑わされていたのか、良い意味で裏切られた。

開放:パフェ

F0.95 1/8000 ISO160

開放:we are open

F0.95 1/2500 ISO200

開放:魚屋

F0.95 1/250 ISO200

柔らかく自然なボケは個人的に好感触。
さすがに露出オーバーとなる場面も散見されたが、今回のように街撮りをするなら問題とするほどではないと個人的には思えた。

比較のために絞り込んで撮影もした。
超広角レンズなので指標は2mの先が無限で、F値を8まで絞れば被写界震度は1mから無限のパンフォーカス撮影が可能。
ファインダーを覗くと歪みのない安定した画面。まるで超広角レンズという事を忘れてしまうほどなので気負うことなく撮影ができる。

カッチリとした描写は開放0.95と比べると完全に別物。

F8 1/1000 ISO200

F8 1/640 ISO200

F8 1/250 ISO200 +0.3

F8 1/400 ISO200

F8 1/500 ISO200

ところで、このレンズには最短撮影距離17cm(撮影倍率1:8.2)という、もうひとつの顔がある。
街中のスナップのように、被写体との距離があれば背景の自然なボケ味を活かせるが、近接撮影となれば被写界震度は浅くなる。
レンズ先端ぎりぎりまで寄っていくとピントが合っているのかどうなのか不安になる。

F0.95 1/4000 ISO200

F0.95 1/160 ISO 200

予想を気持ちよく裏切られた描写。まるで大口径レンズのような開放ボケは色々な意味で酔うのに十分な描写。

今回の撮影結果をふまえ次はレンズの性格を知って撮影に出向くことができる。
機会があれば夜撮影に持ち出してみよう。
開放0.95で夜の街をうろつく。上手くすればマリイのような女性に出会えるかもしれないぜと、安いブドウ酒の酔いが囁いてきた。
ところで今回、何故こんなことを思いついたのかといえば、察しのいい人はすでに気付いているだろう。

自分の滑稽さを承知しつつ、それは太陽のせいだ、と結んでおく。




フォクトレンダー NOKTON 10.5mm F0.95 Aspherical
http://www.cosina.co.jp/seihin/voigtlander/mft-mount/mft-10_5mm/index.html
2015年6月発売
レンズ構成:10群13枚
最短撮影距離:0.17m
フィルター径:72mm
質量: 585g

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